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そうせきしとわたし

回想 子規・漱石

高浜 虚子

線上閱讀高浜 虚子《回想 子規・漱石(そうせきしとわたし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,187 字 · 231 頁

青空文庫

もっとも居士は軽挙はしなかった。けれども居士の口より何故に人に相談せぬかとの非難を受くることは余の甘受し難きところのものであった。

居士は一夕碧梧桐君と余とを携えてそこに別離を叙し別るるに臨んで一封の書物を余らに渡した。それは余らを訓戒するというよりも寧ろ居士自身の抱懐を述ぶる処のものであった。居士はこの従軍を以て二個の目的を達するの機運とした。その一は純文学上の述作、その二はこの事もし能わずともこれによって何らか文学上の大事業を為し得可しというに在った。

旧暦の雛の節句前後居士は広島の大本営に向って出発した。余はどういうものだかその新橋出発当時の光景を記憶して居らぬ。ただ居士が出発当日の根岸庵の一室を記憶して居る。

居士は新調の洋服を着つつある。その傍には古白君が、

「万歳や黒き手を出し足を出し……。」と何かにこういう居士の句の認めてあるのを見ながら、「近頃の升さんの句のうちでは面白いわい。」と何事にも敬服せない古白君は暗に居士の近来の句にも敬服せぬような口吻を漏らした。居士は例の皮肉な微笑を口許に湛え額のあたりに癇癪らしい稲妻を走らせながら、

「ふうん、そんな句が面白いのかな。