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とさのくにばしら

土佐の国柱

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《土佐の国柱(とさのくにばしら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,375 字 · 35 頁

青空文庫

「人間はみんな、……いつか少しずつは変るものだよ」

「いったい貴公、高閑の娘を知っているのか」

「隣同志ではないか」

小弥太はちらと、隣屋敷の方へ眼をやった。……南国の春は早く過ぎる。低い生垣を境に隣っている高閑斧兵衛の屋敷は、家構えこそ松林に隠れて見えないが、相接している庭の隅に、もう散りはじめた桜がひともと、午さがりの閑寂さを語るかに樹っていた。

「隣同志だからどうだというのだ、美人だと評判だけは聞いているが、まだ誰も近寄って顔を見た者はないぞ」

「馬鹿だな」

小弥太は苦笑しながら云った。

「嫁に貰おうと思うくらいで、相手の顔も知らぬ筈はないじゃないか。……断って置くが、まだ話は決った訳じゃないからな。拙者が貰いたいと思っているだけのことだからな」

「詰らぬ。池藤小弥太ともある者が、なにも好んで斧兵衛づれの娘を貰わんでも……」

「なんとやらは、思案の他と云うぞ」

「まるで分らん」

十郎左は髭をひねりあげて「貴公はすっかり変ってしまった。なんだかまるで謎みたいだぞ貴公は。……兎に角、堂上一統に気をつけるがいい、渡辺勝之助などは、貴公を先ず血祭にあげると云ってるそうだから」