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もぐらとらくばん

土鼠と落盤

黒島 伝治

線上閱讀黒島 伝治《土鼠と落盤(もぐらとらくばん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,823 字 · 36 頁

青空文庫

ある時は、井村がケージの脇の梯子を伝って這い上った。ある時は、五百尺の暗い、冷々とする坑道を示し合して丸太の柵をくゞりぬけた。

彼は、彼女をねらっているのが、技師の石川だけじゃないのに気がついた。監督の阿見も、坂田も、遠藤も彼女をねらっていた。

「石川さん、お前におかしいだろう。」

井村は、口と口とを一寸位いの近くに合わしながら、そんなことを云ったりした。

「それはよく分っている。」

「阿見だって、遠藤だってそうだぞ。」

彼女は、平気に肯いた。

「もし追いつめられたらどうするんだい。」

「なんでもない。」タエは笑った。「そんなことしたら、あの奥さんとこへ行って、何もかも喋くりちらしてやるから。」

四

五百米ばかり横に掘り進むと、井村は、地底を遠くやって来たことを感じた。何か事があって、坑外へ出て行くにも行かれない地獄へ来てしまったような心細さに襲われた。鉱脈は五百米附近から、急に右の方へはゞが広くなって来た。坑壁いっぱいに質のいゝ黄銅鉱がキラ/\光って見える。彼は、鉱脈の拡大しているのに従って、坑道を喇叭状に掘り拡げた。が、掘り拡げても、掘り拡げても、なお、そのさきに、黄銅鉱がきら/\光っていた。