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きょうかいなきさべつ

境界なき差別

丘 浅次郎

線上閱讀丘 浅次郎《境界なき差別(きょうかいなきさべつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 8,992 字 · 18 頁

青空文庫

狐の嫁入りなどと名づけて、日が照りながら雨が降ることさえけっして稀でない。夕立の後に現われる虹のごときは、境界なき差別の模範的の好例で、七色の差別は誰の目にも明らかであるが、判然たる境界はどこを探してもけっしてない。赤より樺、樺より黄、黄より緑と、順々に移り行くだけで、急に段が付いて、一の色から他の色に飛び越すごとき所はどこにも見つからぬ。春夏秋冬の四季の変化のごときも、これと同様で、夏は暑く、冬は寒く、春は桜の花が咲き、秋は楓の葉が紅くなって、その差別は誰にも明瞭に知れるが、その間に判然たる境界はけっしてない。暦を見れば、何月何日の何時何分何秒から春になるとか夏になるとか書いてあるが無論その時刻に急激な変化が起るわけではなく、冬はいつとはなしに自然に春となり、春はいつとはなしに自然に夏となり、その間に気候が次第次第に暖くなり行くのみである。昼夜の別も、そのとおりで、昼は明るく、夜は暗く、その差別はいちじるしいが、夜が明けて朝となるときも、日が暮れて夜となるときも、けっして判然たる境界はない。その他透明なものと、不透明なものとの間には種々の程度の半透明なものがあり、個体と液体との間には種々の程度の半流動状のものがある。