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なつのそうれつ
夏の葬列
山川 方夫
線上閱讀山川 方夫《夏の葬列(なつのそうれつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 60,161 字 · 122 頁
ことができる?
笑いかけて、僕はやめた。関口の生真面目な目が僕をみつめていた。
やっと、関口は頬にうす笑いをうかべた。
そういえば、関口は昔から笑いが高価な男だった。
――大まじめな話だ。
と、関口はいった。
――黒瀬という男は、つまりぼくにとって、団地の無数の夫たち、玩具の兵隊たち、ぼくに似た同じような無数のサラリーマンたちの代表者みたいなものだったんだな。無数のもう一人の「ぼく」、その代表のようなものだったよ。
たぶん、御想像のとおりだと思うが、あの霧の夜いらい、ぼくはやつと口もききたくなかった。似すぎているのが不愉快でね、いつも鞄を胸に抱いて、やつのほうでもぼくの目を避けているみたいだった。こそこそと逃げるように歩いていた。むろん、一言の挨拶さえ、ぼくたちはしなかったよ。
きっと、ぼくはやつを通して、玩具の兵隊の一つ一つでしかないぼくたち、すべてを規格化されてしまっているぼくら全体を憎んでいたんだ。無数の「ぼく」という一つの規格品を拒絶しようとしていたんだ。
ぼくはやつを憎んだ。ぼくはやつではない。ぼくは、「ぼくによく似たサラリーマン」の一人ではない。