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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 頁
悪獣毒蛇を恐れない茂太郎が、この時、面の色を真青にして返事ができませんでした。
清澄の茂太郎は、アッとばかりに立ちすくんでしまいました。
がんりきの百蔵は、立ち上って左の手で茂太郎の右の手首をつかまえてしまいますと、
「叔父さん」
茂太郎は悲しい声を出しました。
「何だ」
「堪忍しておくれよ」
「堪忍するもしないもありゃしねえ、お前をよくしてやるんだぜ」
「だって」
「こんな山ん中に隠れているより、江戸へ出りゃあ――両国橋へ帰りさえすりゃあお前、いい着物を着て、うまいものを食べて、人にちやほやされて……」
がんりきの百蔵は、やさしく言って聞かせるように、
「楽ができて、うまいものが食べられて、人からは、やんやといわれて、それでお金が儲かるんだ」
といいました。
「叔父さん、あたいは、この方がいいんだよ、こっちにいたいんだから……」
「何をいってるんだ」
がんりきの百蔵が、茂太郎の言い分をとりあわないのは、あながち、この子供のいやがるのを拉し去ろうというのではなく、自分の推量で、つまり、いま言った通り、江戸へ帰りさえすれば、楽ができて、うまいものが喰べられて、いい着物が着られて、人から可愛がられるのに、こんな山の中へ拐されて来ているのを、不憫がる心もいくらかあるのです。