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だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠1(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,314 字 · 398 頁

青空文庫

竜之助が父の噂をしんみりとやり出したのは、おそらく今日が初めてでしょう。

「この寒さは、さだめて御病気に障りましょう」

「うむ――」

竜之助には、このごろ初めて父のことが気にかかるようになったらしい。島田虎之助を極力ほめていた父の言葉が、昨夜という昨夜、ようやく合点が行ってみると、父はやはり眼の高い人であった……それで自然、今までに出なかった父の噂が唇の先に上って来るのです。

「御無事でおられますことやら。世間さえなくば、お見舞に上ろうものを」

お浜の附け加えたる言葉は竜之助の帰心を嗾るように聞えたか、

「浜――」

「はい」

「二人で一度、故郷へ帰ってみようか」

「あの、お前様が沢井まで……」

「うむ、最初には甲州筋から、そなたの故郷八幡村へ。あれより大菩薩を越えてみようか」

「それは嬉しいことでござんすが――万一のことがありましては」

お浜の面には懸念の色が浮びます。

「忍んで行けば大事はあるまい」

「お詫びは叶いませぬか」

「所詮」

「あの沢井のお邸にお住まいになれば、どんなに肩身が広いでしょう」

「あさはかなことを言うな、生涯あの邸には住まわれぬ」

「もう土地の人とても、大方は昔のことは忘れたでござんしょう」