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だいぼさつとうげ
大菩薩峠1
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠1(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,314 字 · 398 頁
尋常の旅籠に着いて、軟らかい夜具を被って、穏やかに夢を結んだらよかりそうなものを。
身に火のついたものは井戸の中へも飛び込む。竜之助は心頭に燃えさかる火を消さんがために、わざと淋しいところ怖ろしいところを求めて行くのか知らん。闇をたどって忍びやかに鈴鹿明神の頓宮に入りこんだ竜之助は、とりあえず荷物を抛り出して、革袋の中から火打道具と蝋燭と懐中付木とを探って、火をつけ床に立てて、濡れた笠と合羽を脱ぎ捨てて、また革袋から小提灯を取り出し、床に立てた蝋燭をそれにうつして一通り社殿の中を見廻しました。
荷物を枕にしてみたが眠れない。
お浜によう似た女のことが、どうも眼先にちらついてならぬ。若い夫婦が二見ヶ浦のあたりを行く、それがお浜と自分のようだ、おお、郁太郎もおるわい。
とにもかくにも、お浜は情のある女であった。不足を唱えたのはああいう勝気な女の常で、そのくせ、よくあの暮しに辛抱して世話女房をつとめ了せたものだ……情に強いようで実はきわめて脆い女である、自分を誤ったのがあの女の罪か、あの女を誤らせたのが自分の罪か。
今となって物の哀れに動かされると、竜之助も人が恋しくなる、眼が冴えて眠れない。