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だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠1(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,314 字 · 398 頁

青空文庫

峠で竜之助を苦しめた雨は、ここの中庭の植込をも物柔かに濡らしている。関の小万の涙雨は、どちらへ降っても人に物を思わせると見えます。

「どうしましょうねえ」

今までなだめ気味であった女の方が、事情を聞いてから、いっそう力を落したようです。

「せめて妹の身を救うてやりたいが」

暫くたって男の声。外では雨がじめじめ降って、夕べを告げ渡る宝蔵寺の鐘の音に、たったいま女中の点して行った燈の影がゆらゆらと揺れる。女はふと思い出したように、庭の木立に濺ぐ雨を見て、

「日が暮れました、今晩は帰らねば」

素振は急に落着かなくなる。

「帰る?」

男は屹と首をもたげて、

「わしを一人置いてお前は帰るのか」

「悪く取ってはいけませぬ、わたしはもう前のような身では……」

「はあ、それではかねて噂のあったように、あの、お前の縁組みが……」

「そんなことはないが、今宵はどうぞ帰して下さい、そしてわたしにも考えることがあります故、明日の朝は、きっと出直して参りますから」

「もう日も暮れたに、一里半の道を……またさいぜんのような悪者が出たら」

「と言うて、帰らねばわたしの身が立たず。駕籠は宿に頼んで性の知れた者を雇うて行きますから」