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だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠1(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,314 字 · 398 頁

青空文庫

千本通で暮六ツが鳴る。

道すがら町と人家の形勢を見て、そのつもりもなく壬生の地蔵の前まで来ました。地蔵へ心ばかりの賽銭を投げ、引返して表へ出ると例の南部屋敷の前。

「誰の邸だろう、大名にすればたしかに十万石以上」

壬生の村は、もう暗くなる。機を織る筬の音が、この乱世に太平の響きをさせる。知らず知らず綾小路を廻って見れば、田圃の中には島原の灯が靄を赤く焼いている。お松はあの中で何を思っているだろうと、七兵衛もそぞろ物の哀れを感ずるのであります。

七兵衛は、いま壬生の南部屋敷から程遠からぬところの、とある一ぜん飯屋で飲んでいる。

「親方、いい酒だな」

「へえへえ」

「この鰻は、どこでとれるのかね」

「それは若狭鰻でございます」

「これも、なかなかうまいね」

「へえ、なるたけいい物を売らんと、御近所が喧しゅうございます」

「なるほど、御近所にはだいぶ宏大なお邸があるようだ、お出入りがきついから、品もごまかしが利かないのだね」

「まあ左様なわけでござりまする」

酒もよいし、鰻もよいから七兵衛も、陶々とよい気持になって主人と話し込んでゆく。

「お客様はなんでございますかい、お地蔵様へ御参詣で」