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だいぼさつとうげ
大菩薩峠1
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠1(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,314 字 · 398 頁
近くまでやって来たのにも気がつかないようです。このゆっくりと歩んで来たというのは、誰であるか直ぐにわかる。それは、寝る前に必ずひとたびは、明神の境内をめぐって歩く植田丹後守であります。
丹後守は、いま「おだまき杉」の近くへ来て、ふと、根方を突っついている忍びの人影を見つけたので歩みを止めて、何者が何をするかと、しばらく闇の中から、立って見ていました。
丹後守の歩き方は、まことに静かで、草履をふんで歩く時は、歩く時も、止まる時も、さして変りのないほどでしたから、根方の人は少しも気がつきません。
しばらく見ていたが、つかつかと丹後守は近寄って、
「金蔵ではないか」
「はい――」
物影は非常なる驚きで、バネのように飛び上ったのでしたが、わなわなと慄えて逃げる気力もないもののように見えます。
「何をしている」
丹後守は、押して穏かに問う。
「へえ……へえ」
「それは何じゃ」
人影が藍玉屋の金蔵であることは申すまでもありません。
丹後守に指さされたのは金蔵が、幾度も穴へ入れたり出したりしてみた、かの徳利でありました。
「へえ……これは……」
「これへ出して見せろ」
「へえ、これでございますか……これは」