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だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠1(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,314 字 · 398 頁

青空文庫

「あ、人の足音」

「猫でも来たのだろうよ」

「でも、今のはたしかに人の足音でございましたよ」

「度胸のない人だねえ、そんなにおどおどしてさ。あけてごらん」

「おや」

そこにはまさしく人が立っていたので、

「あれ、お前さんは誰だえ」

「誰でもございません、さきほど店前で追っ払いを食いました百姓で……」

「ええ!」

「まず御免なせえまし」

そこへ入り込んで、どっかと胡坐をかいて黒い頭巾を投げ出したのは、なるほど裏宿の七兵衛でありました。

七兵衛は懐ろへ手を入れて、短刀を出して、刃先を前に向けてブツリと畳へ突き通します。

「お、お金がお入用ならいくらでも差上げますから――どうぞ――どうぞ命ばかりは……」

「お内儀さん、お前さんはよく金々と言いなさる、さきほども大枚のお金をわっしに下すったが、その時も申し上げた通り、金が欲しくって上ったわけじゃござんせん」

「そんなら品物を何でも、お好きな物をお持ちなすって……ただいま土蔵へ案内を致させますから」

「くどいやい、今夜は盗みに来たんじゃねえ」

お滝は慄え上りながら、やっと気がついたらしく、

「ああ、わかりました、わかりました。さっきお話の本町の彦三郎の娘のこと、つい小僧から又聞きでございまして、まことに失礼を致しました。