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だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠1(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,314 字 · 398 頁

青空文庫

「この子のために何とかして下さいな、わたしはどうなっても構いませんけれど、坊やだけは世に出したいと思いますわ」

「それはお前に言われるまでもない」

男は少しく癇癪に触ったらしく、

「よく日蔭者日蔭者とお前は口癖に言うが、日蔭者の拙者といるがいやになったか」

「どうしてまあ――」

女は怨めしそうに男の横顔を見つめて、

「こうして四年越し、晴々と明るい世間へ出たこともなし、御近所のお内儀さんたちが、やれ花見のお芝居のと誘って下すっても、ついぞ一日お仲間入りをしたこともないし、それというも、みんなお前さんへの心中立てではありませぬか、そんなことを言われるとホントにいやになってしまうわ」

「いやになったら花見にでも芝居にでも行け!」

男の言葉が荒くなったので、女も気色ばんで、

「あれ、お前さんお怒りなすったの」

男は机竜之助で、女はお浜で、子供というのは二人の中に去年生れた郁太郎で、この三人が住んでいるのは、芝新銭座の代官江川太郎左衛門の邸内のささやかな長屋です。

あれから四年後、二人の生活はこんなふうに変化して、いわゆる日蔭者のその日の暮しは、江川邸内の足軽らに竜之助が剣術の一手を教えるのと、邸内を守ることによって支えられているわけです。