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だいぼさつとうげ

大菩薩峠5

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠5(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,120 字 · 516 頁

青空文庫

「いいや、それは相成らぬ」

あまりに兵馬が執念いために、さすが堪忍無類の覆面ももはや堪り兼ねたか、兵馬の隙を見すまして自分の脇差に手をかけて、スラリと抜打ちを試みようとするらしいから、それを心得た兵馬は逸早くその武家の利腕を抑えると、意外にもそれは女のように軟らかな手先であります。

利腕を取った時に兵馬も、これはと驚きました。手先を押えられた覆面は、それを振り放そうとしましたけれども、その力がありません。

「どうぞ、お許し下さいませ、このままお見のがし下さいませ」

その声は、生地になった女の声であります。

「そなたは御婦人でござるな」

「はい」

もう争うても無益と観念したらしく、覆面の武家は、女としての神妙な白状ぶりであります。

「御婦人の身で、何故にかように男装して、真夜中の道を歩かれまする」

兵馬から尋常に尋ねられて、女はさしてわるびれずに、

「これには深い仔細がござりまする、夫が放蕩者ゆえに、こうして姿を変えて吉原へ入り込み、よそながら夫の身持を見守るためでござりまする」

「ああ、左様でござるか」

兵馬はそれで、いちおう納得しました。

「して、お屋敷は?」