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だいぼさつとうげ

大菩薩峠5

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠5(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,120 字 · 516 頁

青空文庫

「しからば、確とお頼み申しましたぞ」

とばかり馬に鞭をくれてサッサと歩ませて行きました。百姓はその後ろ姿を見送って、

「お代官様みたようなエライお方だ、どこのお邸のお方か知らねえけれど」

と言って、その百姓はいま受取った手紙の表を見ると、見事な筆蹟で、

「扇屋にて、宇津木兵馬殿」

と記してありました。

扇屋の一間に、お君は兵馬を待っていました。遅くも帰るであろうと待っていた兵馬は、ついに帰りません。

兵馬の身の上にも何か変事はなかったろうかと、それが心配になって、心細いよりは怖ろしさに堪えられないようであります。

昨夜、床に就いて、うとうととしかけたのはかなり夜が更け渡った時分でありました。その時に、枕許に人の足音のすることを、確かにお君は気がついていました。

兵馬を待ち兼ねている心持だけで、それに気がついたのではありません、お君は物を用心する女でありました。こうなってみると、自分の身が何物より大切に思われるし、また頼りなくも思われてならないのに、この女は、古市にあって、撥を揚げて旅人の投げ銭を受けることを習わせられた手練が、おのずから心の油断を少なくしていました。