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だいぼさつとうげ

大菩薩峠5

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠5(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,120 字 · 516 頁

青空文庫

駒井甚三郎は腰を屈めて、女の胸のあたりに手を入れました。

「どうでしょう、まだ生き返る見込みがあるんでございましょうか」

清吉は気を揉んでいます。

「絶望というほどじゃない、生き返るとすれば不思議だなあ」

駒井甚三郎は、まだ女の乳の下に手を置いて、小首を傾げています。

「不思議ですねえ」

清吉も同じように、首を傾げると、

「平沙の浦の海は、全くいたずら者だ」

駒井甚三郎は何の意味か、こう言って微笑しました。

「エ、いたずら者ですか」

清吉は、何の意味だがわからないなりに、怪訝な面をすると、

「うむ、平沙の浦の波はいたずら者とは聞いていたが、これはまたいっそう皮肉であるらしい」

「皮肉ですかね」

清吉には、まだよく呑込めません。

「そうだとも、あの暴風雨の中で、波の中の一組だけが別仕立てになって、ここまで特にこの女だけを持って来て、そーっと置いて帰ってしまったところなどは、皮肉でなくて何だろう。見給え、どこを見てもかすり傷一つもないよ、着物も形だけはひっかかっているし、帯も結んだ通りに結んでいる、水も大して呑んじゃいない」

駒井甚三郎は、女そのものを救おうとか、助けなければならんとかいう考えよりは、こうまで無事に持って来て、置いて行かれたことの不思議だか、いたずらだか、波に心あってでなければ、とうてい為し難い仕事のよう