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だいぼさつとうげ

大菩薩峠5

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠5(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,120 字 · 516 頁

青空文庫

兵馬は、それどころではない。碁のお相手は、もう御免を蒙りたいのであります。けれども東雲はいよいよ熱くなって、

「どうぞ、もう一石」

東雲は、兵馬の心持も知らないで戦いを挑むから、兵馬も詮方なしに、

「今度は負ける」

やむを得ず、碁笥の蓋を取りました。

この時に、万字楼の表通りが遽に噪がしい人声であります。第三局の碁を打ちはじめようとした兵馬も、東雲も、新造も、その噪がしいので驚きました。新造が立って表の障子を細目にあけて、楼上から見下ろしてハタと締め切り、

「茶袋が参りましたよ、茶袋が」

「おや、歩兵さんがおいでになったの、まあ悪い時に」

と言って、東雲の美しい眉根に再び雲がかかりました。

「茶袋とは何だ」

兵馬が新造にたずねると、

「歩兵さんのことでございます」

「ああ、このごろ公儀で募った歩兵のことか、あの仲間には乱暴者が多いそうじゃ」

「どうも困ります、あの歩兵さんたちは弱い者いじめで困ります、わたくしどもの方や、芝居町の者は、みんな弱らされてしまいます」

兵馬は往来に面するところの障子を開いて見下ろすと、なるほど、かなり酔っているらしい一隊の茶袋が、この万字楼の店前に群がっている様子であります。