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だいぼさつとうげ

大菩薩峠5

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠5(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,120 字 · 516 頁

青空文庫

「神尾殿の許まで参りまする」

兵馬は相模屋の店先へ軽く挨拶して、その足で座敷へ上ろうとする。

「はい、お二階にお休みでござりまする」

自分が軽く出たから茶屋の者も軽く受けました。兵馬は早速二階へ上り、屏風の中に鼾をかいて寝ている人の枕許へ近寄って、

「神尾殿、主膳殿」

「う、う、うむ」

呼び醒まされた主膳は、唸るようなことを言って寝返りを打ちました。

「神尾主膳殿」

兵馬は、主膳の枕許の刀架から刀を取って、その鍔音を高く鳴らすと、

「やっ、誰じゃ」

「お目ざめでござりましたか」

「其許は誰でござる」

「拙者は番町の片柳と申すものでござりまする、ちとあなた様に、お尋ね申したい儀がござりまして推参致しました」

「ナニ、拙者に何を尋ねたいのじゃ、其許を拙者は知らぬ」

「親しくお目にかかるは初めてながら、拙者はあなた様が甲府に御在勤の折、よそながらお目にかかりました」

「ナニ、拙者が甲府にいた時分? 其許は甲府から何しにこの拙者を尋ねて来た」

神尾主膳は不安らしく起き直って、兵馬の面をながめました。

「私のお尋ね申したいのは、あなた様ではござりませぬ、あなた様にお聞き申したい人がござりまして」