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だいぼさつとうげ

大菩薩峠5

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠5(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,120 字 · 516 頁

青空文庫

十二

「さあ、お聞かせ下さるか、それとも」

こうなった以上は、兵馬もまた力ずくであります。力を緩めると、

「無礼な奴、斬って捨てる」

主膳は直ぐにつけ込んではねあがって刀を抜こうとしますから、兵馬は再びその首を自分の胸へ、いよいよ強く押しつけるよりほかに仕方はありません。

「アッ、苦しいッ、放せ」

「お聞かせ下さらぬ以上は、決してお放し申しませぬ」

「放せッ、苦しい、死ぬ」

「放しませぬ」

「く……」

「さあ、お聞かせ下さい」

「く、死……」

ほとんど死物狂いで主膳がもがくから、兵馬はそれに応じて満身の力を籠めて抱き締めると、やがて急に主膳の力が抜けました。力が抜けたかと思うと、ガックリとその首を、兵馬の胸へ垂れてしまいました。

「や、息が絶えた、死なれたか」

兵馬も我ながら驚きました。知らず知らず自分は、神尾主膳を絞め殺してしまったものらしくあります。

十二

この場にも意外の変事が起りましたけれど、これを外の騒ぎに比べると物の数ではありません。万字楼の前を中心にして、吉原の廓内で市街戦が起っているようなものであります。

秋葉山の大燈籠の下で、近藤勇の手紙の摺物を読んでいた二人の浪士と、それを聞いていた宇治山田の米友の三人は、今の鉄砲の音を聞いて、すわとばかりに駈けつけて見たけれど、騒動の中心たる万字楼のあたりは、近づくことができ