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だいぼさつとうげ

大菩薩峠5

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠5(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,120 字 · 516 頁

青空文庫

「うーむ、水を持て、水を」

まさしく神尾主膳の声であります。

「おや、あの声は……」

女はその声を聞咎めないわけにはゆきませんでした。

「あれは怪しいものではない、拙者の連れの者」

兵馬はこう言いわけをしました。

「お連れの方でございましたか」

女もそれだけは安心していると、

「ああ苦しい、水を持て、水を、女中共、誰もおらぬか」

闇の中で、つづけてこう言い出したから、

「おや、あのお声は?」

兵馬は女をさしおいて、

「お静かに、静かにさっしゃい」

地上へ捨て置いた主膳の傍へ寄ると、

「早く水を持てと申すに。女共どこへ行った、拙者はもう帰るぞ」

「ここは吉原ではござらぬ、静かにさっしゃい」

兵馬は主膳を抱き上げて耳に口をつけて、囁きました。

「吉原でない? 吉原でなければどこだ、暗いところだな、化物屋敷か、染井の化物屋敷か、ここは」

主膳は、人心地がなく物を言っているようであります。

それを聞きつけた女は、

「おやおや、もし、あなた様、そのお方はどなたでござりまする」

女は、立戻って来ました。そうして、兵馬の抱えている人をさしのぞこうとしますから、

「これは拙者の連れの者で、ちと酒の上の悪い男」