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だいぼさつとうげ

大菩薩峠6

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠6(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,112 字 · 362 頁

青空文庫

あなたとの間のことなんぞは、どうでもよいではございませんか、恨みを言えばおたがいに際限がありませんからね。もう少しお待ち下さいまし、今、わたくしがこれを縫い上げてしまいますまで」

「うーん」

「もし、あなた、どうなさいました」

前のは夢の声、これは現実の言葉であります。夢とうつつとの境はよくわかるけれども、女の声には変りがありません。してまた、竜之助の心では、現実の女と、夢の女とを、区別することができません。夢にうなされた自分を呼び起している女の声を、やはり夢で見た同じ女とのみ思うよりほかはありません。

板橋駅の、とある旅籠屋の一室に、夢に見たと同じような行燈の下に縫物をしているのは、どこやらに婀娜なところのある女房風の女でありました。けれどもその縫っているのは、郁太郎の着物ではありません。乱れた髪かたちを直してから、自分の着物の綻びを繕っているものらしい。

夢にうなされた人の声に驚いた女の人は、針の手を止めて暗い行燈の光で、うなされている人の面をさしのぞくと、

「まだ起きておられたのか」

夢から醒めて、かえって現実の人の醒めているのを不思議がるようです。