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だいぼさつとうげ
大菩薩峠6
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠6(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,112 字 · 362 頁
船大工の寅吉、これは豆州戸田の人で、姓を上田と言い、その頃、日本でただ一人と言ってもよろしい、西洋型船大工の名棟梁でありました。
寅吉は机の上に展げた船の絵図面を熱心にながめているし、甚三郎もまた、額を突き合わせるようにしてその絵図面をながめて、あれよこれよと、説明し質問し、質問がまた説明に代ったりしているうちに――もうかなりの夜更けであります。遽かに人の叫ぶ声があって、たしか第六天の前、それとも柳橋の袂あたりの空気が、ヒヤリと振動したのが、ここまで打って響きます。
それで寅吉は、我知らず後ろを振向きました。甚三郎は、なお絵図面の上を見ているが、それでも、耳をすまして何事かを聞かんとしているもののようです。
ワッと崩れた人の声がこの時、また、ひっそりと静まり返ってしまいました。あまりに静まり返ったために、何となく、あたりいっぱいに漂う一道の凄気が、ここの一間の行燈の火影にまで迫って来るようでありました。ほどなく、
「ヤア!」
という気合の声と共に、チャリンと合わせたのは、たしかに霜に冴ゆる刀の響きでした。駒井甚三郎は、絵図を手に取って首を起して、その物音の方をながめます。