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だいぼさつとうげ

大菩薩峠6

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠6(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,112 字 · 362 頁

青空文庫

と言いながら米友は、懐ろから黒塗りの四重印籠を二組取り出して、道庵の前へ並べました。

「なるほど、近所に医者もあるにはあるが、素姓の知れた医者の方が安心だから、それで吉坊主にことわって、わざわざこの長者町の道庵先生までお運び下し置かれたというわけだね。それはそれは痛み入ったことだ、有難くお請けをして、早速、薬は調えて上げるが、米友、もう少し前へおいで」

今日の道庵の猫撫声が大へんに気味が悪いのです。米友にとっては、女軽業のお角というものが苦手であるとは違った呼吸で、この道庵もまた苦手であります。道庵に頭からケシ飛ばされる時も、米友は面食ってしまうが、こうして猫撫声で出られる時も、気味が悪くてたまらない。もう少し前へおいでと言われて、米友が妙にハニカンでいると道庵は、

「薬のことは薬で、たしかに承知致したが、お前に少々物の言い方を教えてやるから、もう少し前へ出ておいで」

なんでもないことですけれども、そういうことが気味が悪いから米友は、あまり道庵の家へ寄りつきません。道庵を恩人だとも思い、医術にかけてはエライところのある先生だと信じてはいながらも、米友が道庵に懐かないのは、いつもこうして米友を苦しがらせては喜ぶといったような、人の悪いところがあるからです。