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だいぼさつとうげ

大菩薩峠6

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠6(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,112 字 · 362 頁

青空文庫

瓶子を片手に、長い白髯を撫でながら堂守の老人は、その後ろをじっとながめました。奥の院から大見晴らしへ通る木の根の高い細道へ、その人は早くも隠れ去って影だに残してはいません。そこにはおもに樺木科の植物が多いから、あるところは、ほとんど月の光をも漏らさぬ密林です。

老人は後ろを見送ったままで小首を捻りました。今は、たしかに丑三時、麓の若い人から頼まれた発句の点をして、今まで夜更かしをしていたが、ようやくそれを終ったから瓶子を洗って、また一陶の酒を汲もうとしている時に、この人影でしたから、老人が沈吟をはじめたのも無理はありません。時は既望の夜で、珍らしいほどに霽れた空の興に浮かれて月を観る人が無かろうはずはないが、月といっても今宵に限ったことはない。未だ曾てこの夜更けに、一人でこの頂上までさまよい来る風流人はありませんでした。

しかしながら、年をとっては無精ですから、わざわざそれを追蒐けてみようとの好奇心も動かず、やがてハタと戸を締めきってしまいました。このあたりでは鳴かない怪禽が、やや下ったところの飯綱権現の境内の杉の大木の梢では、しきりに鳴きます。