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だいぼさつとうげ

大菩薩峠6

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠6(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,112 字 · 362 頁

青空文庫

竜之助の持っている風流といえばおそらく、尺八がその唯一のものでありましょう。それは父の弾正が好んで吹いたものであります。それを学んだ竜之助は幼少の時から、それだけは心得ておりました。伊勢から東海道を下る時に、たしか浜松までは、その一管の尺八に余音をこめて旅をして来たはずです。浜松へ来て、お絹に逢ってから尺八を捨てました。少しく光明を得ていた眼が、再び無明の闇路に帰ったのも、その時からでありました。

父から尺八を教えられる時に、竜之助はよく、尺八のいわれを聞かされたことであります。臨済と普化禅師との挨拶の如きは、父が好んで人に語りもし、竜之助にも聞かせました。竜之助には、そのことがわかったような、わからぬような心持がしていました。父が、よくすべてを禅味に持って行くことを竜之助は、むしろ反感を懐いていました。普化禅師の物語を聞かされた時も、冷淡に聞き流してしまったもので、尺八そのものの音色には、どうかすると我を忘れることもあるのが、自分ながら不思議と言えば不思議であります。

気のせいか知らん、このとき隣室に吹いている尺八の音色が、又なく微妙なものに響きます。