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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《季節のない街(きせつのないまち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 頁
そしてまた長い年月、――どれくらいの年数かは不明であるが、その肩書によって先生は生活を支えてきた。それは紛れもない事実だけれども、塾生を志望する者があらわれようなどとは夢にも思わなかったし、これまでにかつてそんな例もなかった。
ふん、と先生はすばやく考えをまとめた。塾生志望とはいまどき感ずべき青年だ、こういう青年は純真であり朴訥であり、たぶん親からの仕送りもあるだろうし、かたがた愛国的情熱のもちぬしであって、資金集めの役にも立つことだろう。いよいよわが憂国塾も軌道に乗るときが到来したのかしれぬ、よかろう、と寒藤先生は肚をきめた。
よかろう、と先生は云った。きみを塾生として採用しよう。
なにか資格試験のようなものがあるんですか、と八田青年はそのとき質問した。じつを云うとぼく試験のようなものはお歯に合わないんですが。
そんな愚劣なことはぼくもお歯に合わんさ、と先生はらいらくに答えた。一度や二度の試験なんぞで人間の価値がわかるもんじゃない、人間はここだ。先生は痩せたひらべったい腹を叩いてみせ、するとそこはもの悲しげな、空虚な音をたてた。
人間の値打は肚できまる、という先生の判定で、八田青年はその日から塾生になった。