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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《季節のない街(きせつのないまち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 頁

青空文庫

京太は鼻に皺をよせる、「屋台の牛めしじゃあるまいし、いつもいつもこまぎれじゃ鼻についちまうよ、これは食品調理学じゃなく食品衛生学の問題だな」

かつ子はなにも云わない。十五歳の腕と頭で、できる限りのことをしているのだ。魚のいきのよしあしを選んだり、こまぎれでない肉を買ったりする、金もなし知恵もなかった。そしてまた、伯父の苦情に耳をかすゆとりもなかったのである。――かつ子ははたらきどおしにはたらき、伯母と二人で稼ぐときと殆んど同じくらいの賃金を稼いだ。彼女は夜半の一時よりまえに寝たことはなく、午前四時すぎまで寝ていることもない、睡眠時間は多くて三時間、そのあいだは失神した者のように、寝返りもうたず、いびきもかかずに熟睡した。

或る夜半、――というよりも、午前二時ちょっと過ぎたころ、京太が眼をさまして手洗いにゆき、戻って来て寝床へはいろうとしながら、ふとかつ子を見た。

かつ子は仰向きに寝て、片方の足を夜具の外へ出していた。いつもはそんなことはなかった。仰向きに寝ればその姿勢のまま、横向きに寝れば横向きのまま、眼がさめるまで動かないのである。それがそのときは片足を夜具から踏み出してい、大腿上部までがあらわになっていた。