輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《季節のない街(きせつのないまち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 頁

青空文庫

おたねが退院し、かつ子はさらにいそがしくなった。退院はしたが、あと二週間の安静を命じられていたからだ。かつ子はこれまでの仕事と雑用のほかに、おたねのための病人食、――それは医者が献立表に書いてよこし、起きるようになるまでは、この食事表を必ず守ることと云われた、――を作り、身のまわりの世話をし、薬を取りにゆく、という用事がふえた。

「あたしにも運のいいことがあったんだね」おたねは病床でゆっくり手足を伸ばしながら、自分の幸運に酔ったような顔つきで云った、「――病院でしりつされるときは恐ろしかったけれど、なに、死ぬなら死ぬでそれもいい、死ねばあくせく稼ぐことはなし、ゆっくり休んでいられるんだからってさ」

「それがしりつがうまくいって」とおたねは続けた、「二十日の余も暢びり寝たうえ、まだ半月ちかくも寝ていろっていうじゃない、あたしゃものごころがついてこのかた、こんな仕合せなめにあったのは初めてだよ」

そういう言葉ではあらわしきれないような、深い人間味のある幸福感が、おたねの眼にいきいきと溢れていた。けれども、留守ちゅうのかつ子の労をねぎらったり、これから世話になることの感謝の気持は一と言も口にしないし、そんなことを心に思っているようすさえなかった。