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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《季節のない街(きせつのないまち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 頁

青空文庫

おたねは勝手へいって手を洗いながら、いま話しますよ、と云って食事の支度にかかった。

「おれはずっと考えていたんだがなあ、かつ子が本当にあの小僧をやったとすれば、理由はただ一つだ、なあ、おまえもそう思うだろう、理由はただ一つ、あの小僧がかつ子をあんな躯にした相手だからだあな、なあそうだろ」

「あの小僧さんはまだ十七になったばかりですよ」

「かつ子は十五だぞ」

「女と男とは違います」

「人躯生理学では違わなくなったんだよ、アメリカなんかじゃおまえ、子供の成長が早くなっちゃって、結婚年齢をぐっとさげなくちゃならない状態だってことだ、日本だっておまえテーンエージャの問題が、倫理学や解剖社会学で頭痛のたねになってるんだ」

京太は意味もない饒舌を続け、おたねは独りでめしを喰べた。京太の饒舌は無意味にみえながら、じつは或る主体を隠すため、煙幕を張っているかのような印象を与えた。

「ゆうゆうたるもんだな」京太はおたねを見て云った、「自分の血を分けた姪が傷害罪で捕縛されたというのに、まず食欲を満たそうというのはあっぱれなもんだ、女というものは心理学的であるより常に生理学的存在なんだな」