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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《季節のない街(きせつのないまち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 頁

青空文庫

少し私が代ろうかっていったんだよ、とたんば老人がくり返した。そして、片手を柱のほうへ振って、一人じゃ骨が折れるだろうからなと付け加えた。

――おらげっそりしちゃった、と吉は惣さんに告白した。代ろうかなってたっておめえ、おらあなにも工事をしているわけじゃねえや、たんばさんはやさしい顔で笑ってらあ、一人じゃ骨が折れるだろうったっておめえ、骨替りをしてもらえるもんでもありゃあしねえ、それじゃあお願えしますってわけにいくかえ、おらあ手に持ってる刀と、傷だらけになった柱を見て、急にげっそりしててれくさくなっちゃって、しょうがねえからうちへへえって、あの日はいちんちふて寝しちゃったよ。

惣さんがその話をするときには、自分がくまん蜂の吉そのものにでもなったように熱を入れ、身振りや表情や声などに、可能な限りまで実感をあらわそうとするのであった。

たんば老は彫金師だと云っていた。若いころは莨入の前金具だとかキセル、簪などに素彫をするのが得意で、いちじは相当に名も知られたが、現在ではそういう品を使う者が稀になり、高級なコンパクト、帯留、簪、ペンダントなどを手がけている。