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えいがじだい
寺田寅彦随筆集 第二巻
寺田 寅彦
線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第二巻(えいがじだい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 207,099 字 · 419 頁
暑さと寒さの元子はいずれも刺がある。その刺のある様子がちがうというような考えである。これらはもちろんかなり勝手な想像ではある。しかしたとえば芳香属の有機化合物に共通なる環状分子構造のことなどを考えてみると、少なくも嗅覚味覚のごとき方面で、将来このような考えがなんらかの意味で確かめられないとは保証し難いように思われる。音や光でさえも、音波の形が音色を与え、光波の波長の大小が色彩を与える事を考えると、今より百年後の生理学の立場から見てあるいはルクレチウスの言葉を適当に翻訳する事ができるようになりはしないか。不規則に角立った音波は噪音として聞かれ、振動急速な紫外線は目に白内障をひき起こす。その何ゆえであるかは完全には説明されていないではないか。いわんや光の量子説の将来は未知数である。現に光の網膜に対する作用が光電現象であるとかないとかいう議論が行なわれつつある。もしそうであるとすれば、その場合の光は結局素量的であって、すなわち光の元子である。その波の量子エネルギーを定める振動数はある意味での量子の「形」とも見られるのではあるまいか。
それはとにかくすべての感覚を、器械的現象に引きならしてしまおうとしているところに、われわれはルクレチウスの近代科学的精神の発現を認めなければならない。