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えいがじだい

寺田寅彦随筆集 第二巻

寺田 寅彦

線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第二巻(えいがじだい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 207,099 字 · 419 頁

青空文庫

路傍の草

一 車上

「三上」という言葉がある。枕上鞍上厠上合わせて三上の意だという。「いい考えを発酵させるに適した三つの環境」を対立させたものとも解釈される。なかなかうまい事を言ったものだと思う。しかしこれは昔のシナ人かよほど暇人でないと、現代では言葉どおりには適用し難い。

三上の三上たるゆえんを考えてみる。まずこの三つの境地はいずれも肉体的には不自由な拘束された余儀ない境地である事に気がつく。この三上に在る間はわれわれは他の仕事をしたくてもできない。しかしまた一方から見ると非常に自由な解放されたありがたい境地である。なんとならばこれらの場合にわれわれは外からいろいろの用事を持ちかけられる心配から免れている。肉体が束縛されているかわりに精神が解放されている。頭脳の働きが外方へ向くのを止められているので自然に内側へ向かって行くせいだと言われる。

現代の一般の人について考えてみるとこの三上には多少の変更を要する。まず「枕上」であるが、毎日の仕事に追われた上に、夜なべ仕事でくたびれて、やっと床につく多くの人には枕上は眠る事が第一義である。それで眠られないという場合は病気なのだからろくな考えは出ないのが普通である。