輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

あひるとさる

寺田寅彦随筆集 第五巻

寺田 寅彦

線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第五巻(あひるとさる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 194,515 字 · 389 頁

青空文庫

糸車

祖母は文化十二年(一八一五)生まれで明治二十二年(一八八九)自分が十二歳の歳末に病没した。この祖母の「思い出の画像」の数々のうちで、いちばん自分に親しみとなつかしみを感じさせるのは、昔のわが家のすすけた茶の間で、糸車を回している袖なし羽織を着た老媼の姿である。紋付きを着て撮った写真や、それをモデルにしてかいた油絵などを見ても、なんだかほんとうの祖母らしく思われないが、ただ記憶の印象だけに残っているこの「糸車の祖母像」は没後四十六年の今日でも実に驚くべき鮮明さをもって随時に眼前に呼び出される。

この糸車というものが今では全く歴史的のものになってしまったようである。自分の子供などでもだれも実物を見たことはないらしい。産業博物館とでもいうものがあれば、そういう所に参考品として陳列されるべきものかもしれない。

祖母の使っていた糸車はその当時でもすっかり深く媒色に染まったいかにも古めかしいものであった。おそらく祖母の嫁入り道具の一つであったかもしれない。あるいはまた曾祖母の使い慣れたのを大切に持ち伝えたものであったかもしれないのである。とにかく、祖母は自分の家にとついでからの何十年の間にこの糸車の取っ手をおそらく何千万回あるいはおそらくは何億回か回したことであろう。