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あひるとさる
寺田寅彦随筆集 第五巻
寺田 寅彦
線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第五巻(あひるとさる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 194,515 字 · 389 頁
現に昨一九三四年のナツーアウィッセンシャフテン第三十一号に、その飼育法に関する記事が掲載されていたくらいである。
うじがきたないのではなくて人間や自然の作ったきたないものを浄化するためにうじがその全力を尽くすのである。尊重はしても軽侮すべきなんらの理由もない道理である。
うじが成虫になってはえと改名すると急に性が悪くなるように見える。昔は五月蠅と書いてうるさいと読み昼寝の顔をせせるいたずらものないしは臭いものへの道しるべと考えられていた。張ったばかりの天井に糞の砂子を散らしたり、馬の眼瞼を舐めただらして盲目にするやっかいものとも見られていた。近代になってこれが各種の伝染病菌の運搬者播布者としてその悪名を宣伝されるようになり、その結果がいわゆる「はえ取りデー」の出現を見るに至ったわけである。著名の学者の筆になる「はえを憎むの辞」が現代的科学的修辞に飾られてしばしばジャーナリズムをにぎわした。
しかしはえを取り尽くすことはほとんど不可能に近いばかりでなく、これを絶滅すると同時にうじもこの世界から姿を消す、するとそこらの物陰にいろいろの蛋白質が腐敗していろいろの黴菌を繁殖させその黴菌は回り回ってやはりどこかで人間に仇をするかもしれない。