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ならしげざっぴつ

小出楢重随筆集

小出 楢重

線上閱讀小出 楢重《小出楢重随筆集(ならしげざっぴつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 334,351 字 · 657 頁

青空文庫

私はいつか、西洋人に対してさえ恥かしい思をした事があった。その西洋人は日本の国語と、そのアクセントを丁寧に習得した人であったから、美しい東京弁なのである。そして私の言葉は少し困った大阪弁なのであった。

大阪地方は言葉そのものも随分違ってはいるが、一番違っているのは言葉の抑揚である。それは東京弁の全く正反対のアクセントを持つ事が多い。上るべき処が下り、下るべき処が上っている。

たとえば「何が」という「な」は東京では上るが大阪は上らない。「くも」のくの音を上げると東京では蜘蛛となり、大阪では「雲」となる。

大阪の蜘蛛は「く」の字が低く「も」が高く発音されるのである。これは一例に過ぎないがその他無数に反対である。

それで大阪で発祥した処の浄るりを東京人が語ると、本当の浄るりとは聞えない。さわりの部分はまだいいとして言葉に至っては全く変なものに化けている事が多い。浄るりの標準語は何といっても大阪弁である。

従って、大阪人は浄るりさえ語らしておけば一番立派な人に見える。

よほど以前、私は道頓堀で大阪の若い役者によって演じられた三人吉三を見た事があった。その芸は熱心だったが、せりふの嫌らしさが今に忘れ得ない。