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ならしげざっぴつ
小出楢重随筆集
小出 楢重
線上閱讀小出 楢重《小出楢重随筆集(ならしげざっぴつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 334,351 字 · 657 頁
その時、日本全体は米騒動の最中だった。私はここで生まれて初めてであるところの五〇号という大作を汗だらけとなって作り上げたものだった。どうせやけ糞から生まれた絵などろくなものではなかったが、万事の苦しまぎれから私はそれを文展へまで運んでみたものだった。そして落選したことがあった。石の宝殿は私の情けない記念塔でもあるのだ。私はその山だけはなつかしく窓から眺めてみた。やはり相変わらず十年以前の如く白い岩山に松が茂っていた。そして、相変わらずカチンカチンと石を割って切り出しては運んでいるのも見えた。私はこの記念塔がかなり小さく遠ざかって行くまで眺めていた。
尾の道から高浜までの連絡船はいい眺めだった。静かな海上と船の揺れ具合と汽船が持つ独特の匂いとは、私にとって珍しくうれしいものだった。私は船のまかない部屋あたりまでもその匂いを嗅ぎに出かけたりした。したくもないのに便所へまで行って船の匂いを嗅いで歩いた。そしてこんな連絡船の匂いから、私はインド洋、紅海などをさえ思い起こしたりした。
T夫人は船のボーイに幾度となく今日は波は立ちませんかと訊いた。そのたびにボーイはヘイ大丈夫ですと受け合ったにもかかわらずだんだん揺れ出して来た。