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ならしげざっぴつ

小出楢重随筆集

小出 楢重

線上閱讀小出 楢重《小出楢重随筆集(ならしげざっぴつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 334,351 字 · 657 頁

青空文庫

私の生れた家は古めかしく、暗く、戸や柱は黒光りの光沢があった。神棚が店の間に二つ、仲の間に大きいのが一つ、庭に二つ、薬屋だったからその製造場に一つ、前栽に稲荷様が一つ、仏間に仏壇が一つ、合計すると相当の数に上った。

その神様の種類からいえば、先ず店の間の天照皇太神宮を初めとし、不動明王、戸隠神社、天満宮、戎、大黒、金比羅、三宝荒神、神農様、弁財天、布袋、稲荷様等、八百万の神々たちが存在された。朝夕に燈明と、水と、小豆と、洗米を供えてまわるのが私の役目とされていた。だから今でも私は燧石から火を得る術は心得ている。

神様の中には金箔の塗られた大小幾つかの怪しげな形のものまで交っていた。私はそっと取り出して達磨の如くころがして、起上るのを楽しんで叱られたこともあった。

朝と晩とには、父はこの神棚を必ず拝んで廻るのだが、それが相当の時間を費した。われわれ子供らは空腹と飯の香に興奮している時、父はゆるゆると長い経文を唱えているのである。先ず店の間から順番に流し初めて最後が仏壇であった。仏間のお経の長さは格別だった。うんと省略してもらっても二十分はかかった。