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ろうじゅうのめがね

小笠原壱岐守

佐々木 味津三

線上閱讀佐々木 味津三《小笠原壱岐守(ろうじゅうのめがね)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 57,249 字 · 115 頁

青空文庫

実際また平七は、有朋がこの別荘に、何日閉じこもっていようとも、どんな風に世間の目をくらまして、長州陸軍の根を育てる苦心をしていようとも、一向用のないことだった。

そのためにまた明日どこかへ押し流されていったら、流れ止まったところで、ふやけるのもよし、ねじ切って棄てるなら、棄てられるのもよし……。

「陸軍の大将さん。

海軍の大将さん。

さつまはお艦。

ちょうしゅうは大砲。

ちくと刺すのは土佐の蜂……」

「だれじゃ! そんな唄を唄うのは! 平七か!」

「わたしが、――ですか。なにも唄ったような覚えがないですが……」

「いや、よし、分った。近所の小童たちじゃ。だれが教えたか、つまらぬ唄を唄って、悪たれどもがわいわい向うへ逃げて行くわ。仕方のない奴等じゃ。――さあ馬じゃ」

「あ、なるほど、軍服も靴もお着けでござりまするな。ではゆるりゆるりとまいりましょうか」

三日の間、そこに来ては寝ころんでいた秣の中から、むくむくと起きあがると、平七は、曳き出した鹿毛にひらりと乗った有朋のさきへ立って、なんのこともない顔を馬と並べ乍ら、パカパカと三めぐりの土手へあがっていった。