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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
線上閱讀尾崎 士郎《尾崎士郎短篇集(あきかぜとはは)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 頁
「どのくらい時間の余裕がありましょうか?」
そう言って少しもとりみだした様子はなく、典獄が、時間が非常に切迫していると答えますると、
「一時間でいいんだが、君のはからいで何とか――」
「五分間も余裕がありません」
「そうか、原稿の書きかけが監房の中にあるんだが、せめてそれを整理するあいだだけでも」
「駄目です」
これきりで二人の会話は終ってしまいました(柳亭はその朝まで暗い部屋の中で一睡もしないで何か書きつづけていたそうです)。それから柳亭は倒れるように椅子に腰をおろすと、テーブルの上の盆にもりあげてある蜜柑をじっとみつめていました(その日、蜜柑と羊羹がこの人たちに饗応されることになっていたのです)。
すると彼の眼がだんだん涙ぐんできて、
「そうか」
と、言いながら、蜜柑を一つとりあげました。典獄が何か言いのこすことはないかというと、それには答えないでわたしの方を向き、
「いろいろお世話になりましたね」
と、まるでそれは長い溜息のような声でございましたが、それから心をおちつけるためにしばらく眼をとじていました。しかし、眼をあけるとすぐ手に持った蜜柑の皮をむき、白いすじを一つ一つとってから、それをそっとテーブルの上に置き、あつい番茶を、茶碗のふたをなめるようにしてすすりあげると、