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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
線上閱讀尾崎 士郎《尾崎士郎短篇集(あきかぜとはは)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 頁
そのころから母の病気がはじまったのだ。つまりその数年の間に私は母としての彼女を見失なってしまい、それと同時に母もまた人間としての進化を失ってしまったのである。
私は七つから八つまで横浜に住んでいる叔父のところへ養子にやられていたのである。岡崎から横浜までの長い汽車の旅を私は母といっしょに揺られていった。それは私にとって生れてはじめての旅行だというだけではなく私の人生にとっての新しい出発であった。私と母とが腰をかけているベンチのすぐ前に一人の眼鏡をかけた学生が乗っていて彼はほとんど絶え間なしに膝の上に置いた籠の中から葡萄の房をとりだしては喰べていた。私が一眠りして眼を醒ましたときは彼が未だ葡萄を喰べることを止めなかった。それは不思議であるというよりもむしろ私にとって一つのおどろきであった。私はこの時ほどはっきり自分の成長を信じやがて自分も大人になれるにちがいないという意識の中に憧れを感じたことはなかった。何故なら、私の母は私が私の前にいる青年のように葡萄を喰うことのできないのは私が未だ子供であるからということを教えたから。叔父の家に着いてから二日目の夕方、母は私をつれて街へ出た。