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あきかぜとはは

尾崎士郎短篇集

尾崎 士郎

線上閱讀尾崎 士郎《尾崎士郎短篇集(あきかぜとはは)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 頁

青空文庫

を前にしたような、落葉に埋れた小径が五、六町先きにある水田との境を劃る竹藪の前まで続いていたが、ある年の夏わたしが帰省したときには、雑木林はすっかり伐り払われ、竹藪のあった跡には地ならしが終って、納屋の前に立つと今まで遮られていた眺望が豁然とひらけていた。縹渺と続いた水田を隔てて町をめぐる山脈の連峰までが歴々と見えた。これはわたしの家に現われた最も大きい変化であった。この変化と比ぶれば、事務室の構造が変って急に独立した郵便局らしい体裁を備え出してきたことや、父の老衰が目立って来たことなぞは少しもわたしを悲しませなかった。しかし、同じ年の冬はもっと大きい変化が起った。屋敷の門の両側に列をつくって聳えていた松の並木が取り去られ、その代りに新しい黒板塀が家をかこんでしまった。それだけではない、その塀の端しと納屋とを結びつける一直線の竹垣が雑木林の跡を斜めに横切って続いていた。それはこの竹垣の外が最早わたしの家に所属するものでないことを示しているのだ。冬枯れの寒い日であった。落葉がかさかさと足元に鳴るのを聞きながら、次第々々に狭められてゆくわが家の屋敷の中をわたしは年とともに枯れてゆく朽木の幹を撫でるような気持で歩き廻った。