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あきかぜとはは

尾崎士郎短篇集

尾崎 士郎

線上閱讀尾崎 士郎《尾崎士郎短篇集(あきかぜとはは)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 頁

青空文庫

その頃、わたしにとっての一つの疑いは家の財政が何によって樹てられているかということであった。父は何時も身辺に小さい支那鞄を置いていたが、その中には郵便局に属する官金が入れてあった。それから、彼は細長い皮財布を持っていて、その中の金を家の小さい費用の支弁に当てていた。しかし、その財布はわたしの知るかぎりでは、十円以上の金によって充されたことがなかった。あるとき、――それは未だわたしが中学に入ったばかりの頃であるが――父が出入りの骨董屋に金を払っているのを見たことがある。たしか二、三十円の金額であった。父は最初用箪笥の抽出をあけて何時もの財布をとりだした。やがて、それを逆さまにして中からこぼれ落ちた数枚の五十銭銀貨を掌の上にうけとってから、また財布の中へ流すように落した。それから、くるりと背ろを振向いたと思うと彼の左手は官金の入れてある支那鞄の蓋をあけていた、一瞬間であったがわたしの胸の底をもやもやとしたうそ寒い感じが通りぬけた。父はその中に束ねてあった紙幣をぬきだして骨董屋の手に渡したのだ。それは全く何気ない調子をもって行われたが、わたしは父が財布の中の五十銭銀貨を掌の上にうけとって、じっと見詰めていた瞬間、彼の表情の中にわざとらしい技巧を感じてしまったのだ。