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やまのこんじゃく

山の今昔

木暮 理太郎

線上閱讀木暮 理太郎《山の今昔(やまのこんじゃく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,554 字 · 42 頁

青空文庫

神は仏の化現で、本地の仏が迹を垂れて神となったのであると説かれる様になって、ここ本地垂迹説は全く完成し、或は天台或は真言の教義に拠りて詳しく説明された精密なる組織を以て、山王一実神道及び両部習合神道が創設され、古来の山岳信仰と牴触矛盾することなくして、民心を収攬するに足る山岳宗教が新に発生したからである。これが将来に於て民衆的登山の普及するに至った最大の原因であり、そして其理論を実践躬行し、之を全国に伝播する媒介者として最も力あったものは、是等の神道と合流した役行者を始祖とする後に修験宗と呼ばれた一派であったと考える。実に山を開いたものは名僧大徳であったが登山を盛ならしめた者は山伏即ち行者であった。

神変大菩薩の号を賜わった役公小角が大峰を開いたのは天武天皇の頃であるが、其歿後は修法の為に登山する者も次第に絶えたものか、宇多天皇の寛平元年に当山派の祖である理源大師(聖宝)が中興開山の峰入りをした時には、榛莽塞りて行路なく、葛を攀じて之を蹈み開いたと伝えられている。山を保護する途は他なし、唯自然の儘に放置するにありといわれている通り、どんな立派な山道でも二、三十年も修理を加えなければ、大抵跡方もなくなって了う。