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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)

山の憶い出 上

木暮 理太郎

線上閱讀木暮 理太郎《山の憶い出 上(ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ))》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 284,014 字 · 565 頁

青空文庫

奥秩父の山旅日記

私が始めて秩父の山々から受けた最も強い印象は、其色彩の美しいこと及び其連嶺の長大なることであった。水蒸気の代りに絹針でも包んだような上州名物の涸風が、木の葉色づく十月の半過ぎから雪の白い越後界の山脈を超えて、収穫に忙しい人々の肌を刺すように吹きすさむ日が続くと、冬枯の色は早くも樹々の梢に上って、日蔭には霜柱が白く、咽ぶような幽韻な音を間遠に送る大和スズの声を名残として、大地は漸く静寂の眠に就こうとする。此頃からして秩父の群山は其翠緑の衣を脱ぎ捨てて、最も目覚ましい絢爛の粧を凝らすのである。「秩父山が見えて来た」里人の口から出る此の無造作の一言の中に、どれだけの深い意味が含まれているかは、斯ういう人達の日常の言葉を注意して味わっている人には、容易に洞察することが出来ようと思う。

実に秩父の山々は、私の生れ故郷東上州から眺めては、初冬から一月下旬にかけて素晴らしく豊富な色彩を現わす。そして其色には深い深い神秘が包まれている。美しいと共に崇高である。然しそれは北アルプスの雪の山が、山それ自身が高大である為の崇高ではない。或は杉並木の奥からほの見ゆる丹塗りの御社の「神」