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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)

山の憶い出 上

木暮 理太郎

線上閱讀木暮 理太郎《山の憶い出 上(ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ))》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 284,014 字 · 565 頁

青空文庫

小穂口沢に就ては何の知る所もない。水長沢も高廻りをした上に甚しく不注意であったから、一向に記憶に残っていない。聞く所に拠ると此沢は崖もあり瀑もあって、河床を遡上することは可なり困難であるが、二、三ヶ所少し高廻りをするだけで、平ヶ岳まで沢を上り得るということである。所謂三弦は五万の図に水長沢と記入してある長の字の所の三渓であるか、それとも水の字の附近の三渓であるか判然しない。人夫の言う所では後者らしく思われた。

序に水源地の林相を陳べて見ると、この地方では秩父などで見るように喬木帯が闊葉、針闊混淆、針葉という順序に判然と認められない。これは主として山が低く、漸く闊葉喬木帯の上部に達しているのみに過ぎない為であろう。然るにそこは既に風雪の激しい山頂若しくは夫に近い所であるから、椈や楢や七竈までが令法や万作などと同じように灌木状をなして曲りくねっている中へ、米躑躅や石楠などが割り込み、甚しい場所では更に黒檜や米栂や偃松をさえ交えている。就中偃松は千八百米附近から姿を顕し、陣竹(根曲り竹)と混生していることなどもあった。闊葉喬木では千米前後の地点に亘って、掬の大深林が至る所に見られる。