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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
線上閱讀木暮 理太郎《山の憶い出 上(ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ))》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 284,014 字 · 565 頁
瀑と想ったものも、其中の幾つかは谷らしい窪の白いガレであったかも知れぬと思う。
吾既に御岳を攀ぢて遍く山巓の奇勝を探り、地獄谷の噴煙を視、中山道を下りて其夜は寝覚の里に宿り、明れば八月十五日、駒ヶ岳へと志し、一渓流に沿ひ登ること半里ばかり、敬神の瀑を見る、更に登ること二里、熊笹を排し、矮樹を踏みて進み行けば、枯木自ら僵れて※(「虫+(収-又)」、第4水準2-87-27)竜路に横たはり、土柔かに苔潤ひ、老檜枝を交へて崇軒高聳し、白日猶ほ暗く、習習たる冷風谷より吹き上りて、白露衣襟に落つるなど、浮世に遠き山中とて、早くも秋の音づれてや、こゝかしこの岩蔭には萩、桔梗、女郎花などの名も知らぬ花の中に咲き匂ひて、をかしさいはむ方なけれども、山深くして鳥の声も稀なれば、神澄み骨冴えて、物とはなしに凄まじく、憩ひもあへず辿り行くに、途益急にして、樵夫の外には通ふ人もあらざればにや、蘚菌滑かなること粘土の如く、※(「足へん+倍のつくり」、第3水準1-92-37)転するもの数次、遂に巨巌の欹つありて、仄径縷の如くなるを過れば、金懸の小屋といふに達す。
御岳の頂上から黒沢口を下って、福島に着いたのは午後二時半であった。