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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
線上閱讀木暮 理太郎《山の憶い出 上(ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ))》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 284,014 字 · 565 頁
長次郎と源次郎が先に立って登り出す、見たところでは格別疾いとも思われないが、足が竦むようで容易に跟いて行かれない。三人の中では比較的足の遅い金作の側を離れまいと努めても、一歩一歩に深い注意を払いながら、目の前に顕れた雪の上にちらと視線を投げて、刹那に足掛りのよさそうな所を選んで其方へ足を運ぶので、いつか横の方へそれて後になってしまう。この急坂で旨く滑ればあの岩礁までは一気に転げ落ちるから全く油断はならない。南日君はと見ればいやに落ち着いて右の方を登っている、実君は盛に鳶口を打ち込みながら一町許り下から登って来る。ほんの一瞬間にこれだけの事実を慥めて、独り取り残されなかった安心の胸を撫で下ろす。
漸く雪堤の縁に辿り着いて前面を見渡すと、如何だろう、急直なること更に甚しい雪の洪濤が襲いかかるようにそそり立っている、先へ登って早くも波頭に足を蹈み掛けた長次郎と源次郎の体が今にも仰向けに倒れるかと想われた。鉛の様に重い足を引摺ってやっと半ば過ぎまで登る、斯う暇取れては面白くない、カンジキを穿いて此急傾斜を一息にグングン登ったら、どれ程好い気持であろうとよせば好いのに、あたら時間を費して腰に着けていたカンジキを穿いて見る。