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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)

山の憶い出 上

木暮 理太郎

線上閱讀木暮 理太郎《山の憶い出 上(ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ))》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 284,014 字 · 565 頁

青空文庫

劒沢もツルギといわずツルガと発音した)を過ぎると再び橋を打って左岸に移るのであるが、此橋の打てるか打てぬかが遡行の可能不可能を決するもので、うまく打てればいいがと幾度も気懸りらしくつぶやくのであった。私達は仙人谷から先へは行かなかったので、其架橋地点が果して何の辺であるかを確め得なかったが、冠君の蹈査した結果から推せば、仮に架橋し得たとしても、左岸の山側を辿って平に出ることは、黒部別山を踰えでもしなければ不可能である。そして黒部別山に登ることも其辺からは絶望に近い。それで私は果して助七は平まで通ったことがあるのであろうかとの疑が後に生じたのであった。勿論山谷の跋渉に慣れ切った者が身軽で歩けば、七日で足りるにしても、荷物のあることを考に入れて、相当に準備することを怠ったものとすれば、案内者としては手ぬかりであったことを免かれないであろう。邪推すれば或は助七の黒部に関する既知の範囲は棒小屋沢附近迄に限られていたので、仙人谷まで案内して行程を打切る意図を初めから持っていたのではないかと想われるような曖昧な態度がないとは云えなかった。斯様な臆測はしかしよくない事だ。