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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
線上閱讀木暮 理太郎《山の憶い出 上(ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ))》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 284,014 字 · 565 頁
鐘釣温泉まで
それは兎もあれ助七が初めて私達を比較的困難なく仙人谷まで導いて呉れた功労は、之に依って没しさる可きものではない。私は今も深く感謝の意を表している。
此年は又丁度古河合名会社で、餓鬼の田甫から棒小屋沢までの路を作る最中であった。この一行には黒部の紹介に力を入れていた『高岡新報』の記者が同伴して居たらしい。それで私達を恰も競争者であるかの如くに思い違え、且一行の案内を頼まれた助七が夫を断って置きながら、先約ではあったが、私達の案内者となったことも刺戟となってか、よくは知らないが何かと盛に書き立てたそうである。このはしがきは当時を記憶している人の参考ともなるであろう。
鐘釣温泉まで
中村君と私の乗った上野駅発明石行の列車は、七月二十七日の午前八時半に泊駅に着いた、長次郎と竹次郎が約の如く迎に来ていた。例年ならば此頃は快晴な登山日和の続く季節である。今年は如何したものか兎角降り勝で、山登りには不適当な天候であった。殊に黒部の谷深く入り込もうとする私達には、絶えず其事が気遣われた。今日も汽車を下りて町をあちこち買物に歩いている中に大雨が降って来た。昼頃に漸く歇んだが、小川谷の奥に朝日岳の雪がちらと見えたのみで、僧ヶ岳や駒ヶ岳の連脈には雲が低く垂れていた。