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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)

山の憶い出 上

木暮 理太郎

線上閱讀木暮 理太郎《山の憶い出 上(ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ))》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 284,014 字 · 565 頁

青空文庫

室堂を経て下山

夜中に時鳥の鳴く音を聞いたような覚えはあるが。

室堂を経て下山

四日。午前五時頃目が覚めた。外では焚火がパチパチ音を立てて燃えている。天幕から出て空を仰ぐと、曇ってはいるが高い巻層雲だ、眺望は四方に開けていた。間近い劒の八ツ峰から三窓の頭へかけて簇立した岩峰の群が真先に目を惹く。此処から見ると三窓の頭は、三つ許りの尖峰が鋭く天を刺して直立している、一群の王者だ。右に三窓を隔てて小窓の頭が蹲踞し、左に続く稍低いが根張りの大きい頭の尖った二、三の峰は、近習であろう。夫から一段低く六つ七つの岩峰が一列に押し並んで、円味を帯びた峰頭を北に傾けて、稽首しているかのさまがある。襞という襞は雪に埋められ、堅剛な肌は偃松に掩われて、ざらざらの岩屑などは何処にも見られない。何という素派らしさであろう、思わずヤアと声をかけて、のけ反らないではいられない気持になる。南には別山、真砂、富士の折立から、遠く野口五郎、南沢岳などが見え、北より東にかけては、猫又山から、朝日、白馬、鑓、奥不帰、唐松岳に至る後立山山脈の山々が望まれた、さまざまな形をした残雪が山の特長を語っているのが懐しい。